ソニーとワーナーがAnthropicを提訴——海賊版音楽でClaude訓練の疑い(2026)

ソニーとワーナーがAnthropicを提訴——海賊版音楽でClaudeを訓練した疑い
Sony Music Publishing(ソニー・ミュージック・パブリッシング)とWarner Chappell Music(ワーナー・チャペル・ミュージック)は2026年8月28〜29日、AI企業Anthropicを相手取り、著作権で保護された楽曲・作詞を違法にtorrentダウンロード、スクレイピング、大量取得してClaudeモデルを開発したとして連邦裁判所に訴えを提起した。CEOのDario Amodeiと共同創業者Benjamin Mannも個人被告として名指しされている。
訴状はカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提出された。出版側は「史上最大かつ最も露骨な進行中の知的財産窃盗の一つ」と表現している。Anthropicは「出版者の主張に同意しない」と述べ、法廷で積極的に争う意向を示した。
案件概要
Sony Music Publishing & Warner Chappell
作詞・作曲権を管理する主要音楽出版社。
Anthropic、Dario Amodei、Benjamin Mann
会社に加え創業者もtorrent関連で提訴。
1作品あたり最大15万ドル
DMCA著作権管理情報削除については1件最大2.5万ドルも請求。
15億ドル(Bartz v. Anthropic)
海賊版書籍ダウンロードをめぐる米史上最大の著作権和解。
訴状が主張する内容
出版側は、Anthropicがライセンスなしに著作権で保護された歌詞・楽曲をClaudeの開発に使用したと主張する。争点は利用だけでなくデータの取得方法にある。
| 手段(主張) | 内容 |
|---|---|
| BitTorrent / LibGen | 2021年6月、Mann共同創業者がLibrary Genesisから少なくとも500万冊の海賊版書籍をtorrent取得。歌詞・楽譜を含む。 |
| PiLiMi torrent | 2022年7月、Anthropic従業員がPirate Library Mirrorから200万冊以上を追加取得。 |
| 歌詞スクレイピング | MusixMatch、LyricFindなどライセンス済み歌詞サイトを無許可でスクレイピング。 |
| 書籍スキャン | 中古書の「破壊的スキャン」でテキスト抽出。 |
| データセット | Common Crawl、The Pile、Books3などと組み合わせて使用。 |
| 合成データ経路 | 海賊版で訓練した非商用モデルが合成データやRLフィードバックを通じ商用Claudeに波及したと主張。 |
訴状に挙げられた楽曲には〈Ain’t No Mountain High Enough〉、〈All I Want for Christmas Is You〉、〈Eye of the Tiger〉、Taylor Swiftの〈Paper Rings〉などがあり、出版側は数万作品規模の複製があったと主張する。
出版権とレコードの違い
本件の原告は音楽出版社であり、作詞・作曲(コンポジション)権を管理する。レーベルが保有するマスター録音権とは別物である。海賊版書籍や歌詞DB、torrentテキストから歌詞を取り込む行為も、出版側は複製権・配布権の侵害になると主張する。
億ドル書籍和解との関係
Bartz v. Anthropicにおいて、2025年6月Alsup判事は合法取得書籍でのLLM訓練は転換的使用としてfair useになり得る一方、LibGen・PiLiMiからの海賊版取得・保持はfair useに当たらず「明白な海賊行為」とした。そのリスクが15億ドルの和解(2026年7月最終承認)につながった。
| 論点 | Bartz判決 | 音楽訴訟への示唆 |
|---|---|---|
| 合法ソースでの訓練 | fair useの可能性 | 違法取得は免責されない。 |
| LibGen / PiLiMi | 侵害 | 音楽訴状も同じ取得経路を追及。 |
| 創業者責任 | Mann個人の大量torrent | Amodei・Mannが再び被告に。 |
| 賠償 | 和解約3,100ドル/作品 | 音楽側は法定最大15万ドル/作品を請求。 |
Anthropicをめぐる出版業界の多線訴訟
Concord / UMG I(2023)
約500作品。歌詞複製・訓練を争点。fair use部分判決が進行中。
Concord / UMG II(2026年1月)
2万作品超、約30億ドル請求。torrent・シャドウライブラリが争点。
BMG(2026年3月)
493作品。別系統の出版社訴訟、初期段階。
Sony Music PublishingとWarner Chappellの提訴により、3大メジャーの出版部門がすべてAnthropicを法廷に追い込んだ。
Anthropicの回答と未決の論点
Anthropicは公開声明で主張に不同意し、 robust に防御すると述べた。同社は以前、商用ClaudeがLibGen・PiLiMiデータセットを直接訓練に使っていないと説明し、後に合法な紙の書籍も購入したとしている。Sony–Warner側は合成パイプライン経由でも海賊版由来が残ると反論する。discoveryで訓練コーパス、出力、創業者責任が明らかになる。現時点ではすべて主張に過ぎない。
AI訓練データへの示唆
無料スクレイプから有償入力へ
権利者はライセンス課金か訴訟か。訓練データは公共財からコスト項目へシフトしている。
取得方法が利用と同じくらい重要
Bartz判決は、転換的訓練は認めても海賊版取得は認めない方向性を示した。
多面的な法務リスク
Anthropicは音楽訴訟、書籍和解、fair use攻防を同時に抱え、業界全体の先例になる。
結論
Sony Music PublishingとWarner Chappellの提訴は、AIと著作権の戦いを数万規模の楽曲コンポジションへ拡大した。Anthropicが書籍作者訴訟で15億ドルを支払ったtorrent行為と同型の取得方法が、再び問われている。

